風邪をひきやすい人、風邪をひいたら治りにくく長引く人、疲れやすい人など、同じ状況でも、なんともない人と、体調が悪くなる人がいます。
これは免疫力の低下が原因かもしれません。
感染症から体を守るためにも、今、免疫力の強さが注目されています。
免疫力は、加齢やストレス、生活習慣などの影響を受けます。
それにより、免疫の力は弱くもなり、強くすることもできます。
生活習慣の中でも、食事により食べ物から摂取する栄養は、体をつくる大切な役割を持ち、免疫力にも影響を与えます。
今回は免疫力を高めるための食べ物、その中でも納豆に注目し、免疫力との関係をお話します。
免疫力って何?
免疫とは、さまざまな病気から、健康を守るためにある、体のシステムです。
例えば、風邪をひいた時に発熱など、炎症が出るのは、病原体と免疫が反応しているからです。
肌が荒れたり、口内炎ができるのも、免疫が機能を維持する力、免疫力が弱まって起こります。
自然免疫
自然免疫は生まれつき持つ免疫です。
皮膚や粘液、粘膜、白血球の働きを言います。
細菌やウイルスなどの病原体から、体を守るため、皮膚は物理的に異物の侵入を防ぎ、唾液などの粘液は殺菌作用により異物から体を守ります。
異物がさらに侵入してしまうと、免疫細胞と呼ばれる白血球が病原体とたたかいます。
白血球は、血液細胞のひとつで、他に赤血球と血小板があります。
獲得免疫
自然免疫がもともと備わっている力に対し、後天的に得られるものを、獲得免疫と言います。
皮膚や粘液、白血球などの自然免疫では退治できなかった場合、獲得免疫が働きます。
病原体に対抗する力、抗体をつくり、体を守ります。
一度かかった病気にかかりにくくなる「免疫ができた」という状態が、この獲得免疫の働きです。
免疫の記憶には、長期的なものと、1〜2週間程度の短期的なものがあります。
一度かかった病気に、またかかってしまうこともある、ということです。
獲得免疫が働くときには、発熱などの症状が出ます。
自然免疫だけで解決できると、症状は軽く、感染も拡大しにくくなります。
白血球の種類
【単球】血液中の約5%
- マクロファージ
- 樹状細胞
異物を食べたり、異物の情報を記憶、伝達する役割がある自然免疫です。
【顆粒球】血液中の約60%
- 好中球
- 好酸球
- 好塩基球
殺菌作用を持つものもあります。
異物を食べますが、その後、活性酸素を放出し、膿となって残ります。
自然免疫です。
【リンパ球】血液中の約35%
- NK細胞 (自然免疫)
- T細胞 (獲得免疫)
- B細胞 (獲得免疫)
リンパ管、リンパ液を使って、体内をめぐります。
NK細胞は、 外からの異物だけでなく、体内でできたがん細胞を倒す力も持っています。
ですが、加齢やストレス、生活習慣などの影響を受け、その力が落ちてしまいます。
免疫力をあげるために、免疫を活性化させる必要があります。
T細胞、B細胞は、自然免疫を越えて侵入してきた異物を倒します。
一生のうち、働く力を低下させることは、ほとんどありません。
免疫と腸の関係
体内の免疫細胞の、約60〜70%は、腸内の粘膜に集まっています。
そのため、腸内の環境が悪化すると、免疫細胞の強さにも影響が出ます。
免疫細胞を活性化させるためには、腸内細菌の働きが重要になります。
腸内細菌
腸内の環境を左右するのが、腸内細菌です。
腸の中で、食べ物をエサにして生きています。
機能ごとに善玉菌・悪玉菌・日和見菌に分類されます。
いい腸内は、善玉菌の割合が多いだけでなく、菌の種類が多いことも重要です。
腸のバリア機能が高まり、免疫力がアップします。
善玉菌
カラダに良い影響を与えます。
代謝物の消化・吸収機能に役立ち、バランスのいい食事を好みます。
悪玉菌
カラダに悪い影響を与えます。
便秘や下痢を招いたり、代謝によって有害な毒素をつくります。
高脂質・高カロリーの、偏った食事を好みます。
日和見菌
腸内細菌の70%を占めます。
善玉菌・悪玉菌のうち、数的に優位な方の味方をします。
免疫力が下がる原因
免疫力が低下すると、病原体とたたかう力が弱くなります。
風邪など病気にかかりやすくなり、治りにくくもなります。
肌の免疫力が低下すると、肌が荒れます。
免疫力が低下する原因には、加齢やストレス、生活習慣の悪化、自律神経の乱れなどがあります。
生活習慣
栄養バランスが悪く、偏った内容の食事を続けたり、欠食や食事時間のばらつきで、免疫力は低下します。
睡眠不足や生活リズムの乱れからも、免疫力の低下につながります。
体温調節、ホルモン分泌、血圧の調整などをくるわせる原因になるからです。
運動不足や体の冷えは、血流を悪くする原因になり、リンパの流れがスムーズに行われなくなり、これもまた、免疫力低下につながります。
自律神経
体温や血圧、ホルモン分泌など、体の状態を一定に保とうとする機能を、自律神経といいます。
自律神経には、緊張状態に働く交感神経と、リラックス時に働く副交感神経があります。
交感神経と副交感神経、どちらかに偏りすぎると、免疫力にも影響が出ます。
ストレスや緊張、怒りなどが続くと、交感神経が働きすぎになり、リンパ球が減少します。
さらに血管の収縮により、血流が悪くなり、血液にのって移動するはずの免疫も、スムーズに進まなくなります。
リラックス状態の副交感神経が働きすぎると、リンパ球が増え、過剰な反応が起こります。
花粉症やさまざまなアレルギー症状につながります。
大豆の栄養
大豆(蒸し大豆)100gあたり
エネルギー 186kcal
たんぱく質 16.6g
脂質 9.8g
炭水化物 13.8g
食物繊維 10.6g
(日本食品標準成分表2020)
たんぱく質
大豆には、たんぱく質が豊富に含まれます。
人の体は、約20%がたんぱく質からできています。
筋力、消化管、内臓、血中ヘモグロビン、髪、皮膚のコラーゲンなど、体の重要な組織が、たんぱく質からできています。
体のたんぱく質を構成している成分はアミノ酸で、20種類あります。
体に必要なアミノ酸の中には、体内でつくり出せるものもありますが、体内ではつくり出せず、食事で補うしかないものもあります。
この体内ではつくり出せないけれど、必要なアミノ酸(必須アミノ酸)は9種類あります。
この9種類、全部入っているのが大豆です。
食物繊維
腸内環境を整えてくれるもののひとつが、食物繊維です。
大豆には食物繊維が豊富に含まれます。
食物繊維には、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の2種類があります。
この2種類の食物繊維を、バランスよく摂ることが大切です。
目安は水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の割合を、1 : 2 で摂取するのが理想です。
水溶性食物繊維
水分を抱き込んでゼリー状にし、腸内の老廃物を吸着し排出します。
悪玉菌を減らします。
糖質の吸収をおだやかにし、食後の血糖値の急上昇をおさえます。
不溶性食物繊維
水分を吸収し、膨らんでかさ増しし、腸の蠕動運動を促進させます。
善玉菌のエサになり、腸の調子を整えます。
不溶性食物繊維を摂りすぎると、便秘がひどくなる人もいますので、そういう人は水溶性食物繊維を多く摂ってください。
大豆イソフラボン
大豆イソフラボンは、ファイトケミカルのひとつです。
植物には、「ファイトケミカル」といわれる非栄養成分が存在します。
紫外線や有害物質から、植物自身が体を守るための物質です。
植物の、色や香りの成分のほとんどが、このファイトケミカルです。
ファイトケミカルの代表的なものには、ポリフェノールがあります。
ポリフェノールは、植物の苦味や色の成分です。
大豆イソフラボンも、ポリフェノールのひとつで、他にも、赤ワインやブリーベリーに含まれるアントシアニン、お茶に含まれるカテキンなどがあります。
ファイトケミカルには、栄養素とは別に、体に有効な成分が含まれます。
大豆イソフラボンは、女性ホルモンと構造が似ています。
女性ホルモンの分泌が低下すると、女性ホルモンの代わりになり、作用します。
肌の弾力を保つコラーゲンをつくったり、抗酸化作用により、活性酸素を抑制します。
大豆イソフラボンは、腸内細菌の作用や発酵によって、体に吸収されやすい形になります。
大豆サポニン
大豆に含まれる、苦みや渋み、えぐみの生活リズムです。
植物の根、茎、葉に多く含まれる成分で、活性酸素の増加を抑えます。
ビオチン
腸内で合成されるビタミンBの一種で、皮膚や粘膜、髪をつくる助けをします。
たんぱく質、炭水化物、脂質の代謝に関わり、酵素の働きを補助します。
大豆レシチン
リン脂質という脂質の一種です。
血液中に長く留まり、動脈硬化や脳卒中を予防します。
セレン
ビタミンEの約40倍の、抗酸化作用があります。
抗酸化作用とは、活性酸素による体の酸化を抑える働きです。
人は酸素を取り入れると、栄養と結びつけてエネルギーとして使います。
ここで残った酸素は、活性酸素になり、細菌やウイルスと闘うなど必要な役目があります。
ですが、活性酸素が過剰に発生すると、細胞を傷つけてしまい、生活習慣病の発症や、老化につながることもあります。
納豆の栄養
納豆は、蒸したり茹でたりした大豆に、納豆菌をつけ、発酵させた食品です。
納豆菌は、大豆に含まれるたんぱく質を栄養にし、ナットウキナーゼという酵素を増殖させ、旨み成分や納豆特有のネバネバ成分を作り出します。
大豆の栄養プラス、納豆菌の発酵によりつくられた、新たな栄養をあわせ持つ食品なのです。
糸引き納豆(100g)あたり
エネルギー 190kcal
たんぱく質 16.5g
脂質 10.0g
炭水化物 12.1g
食物繊維 6.7g
(日本食品標準成分表2020)
ナットウキナーゼ
大豆に納豆菌をつけ、発酵させることにより生成される酵素です。
大豆には含まれなかった、納豆特有のネバネバ成分です。
血流を改善し、血栓ができるのを防ぐ働きがあります。
大豆イソフラボンアグリコン
大豆イソフラボンが、発酵により変化した成分です。
大豆イソフラボンのままでは、体内に吸収しにくいのですが、発酵により構造が変わり、腸からの吸収効率が高くなります。
大豆イソフラボンと同様に、抗酸化作用があり、肌のハリや弾力を保ち、シワの予防、保湿力も高めます。
ジコピリン酸
納豆菌の発酵により生成される、抗菌成分で、納豆のネバネバに含まれています。
細菌やウイルスの働きを抑制します。
腸内の悪玉菌を減少させたり、がん細胞も自滅させます。
ムチン
納豆菌によって生成される粘性の物質です。
胃の粘膜を保護し、炎症を抑えます。
消化吸収を促し、血糖値やコレステロール値を低下させます。
納豆ペプチド
納豆菌が、大豆のたんぱく質を分解することで生成される物質です。
腸では、たんぱく質よりも早く吸収されます。
運動による筋肉の損傷を修復し、筋肉を増やし、強くします。
運動後の疲労も、軽減されます。
基礎代謝も高まり、体脂肪の燃焼にもつながります。
ポリアミン
細胞の生まれ変わりに必要な成分です。
新陳代謝を促進し、老化予防につながります。
ビタミンB2
たんぱく質、炭水化物、脂質の代謝に必要なビタミンです。
脂肪を燃焼、分解し、動脈硬化や糖尿病などの予防につながります。
ビタミンK
納豆菌によって、もとの大豆の約30倍にも増加します。
カルシウムとともに、骨を丈夫に保つために、必要な成分です。
免疫力と納豆のつながり
免疫力を上げる方法は、ひとつではありません。
運動や睡眠、食事の質を改善したり、生活習慣を見直し、ストレスを減らすことで、免疫を活性化することができます。
毎日の食事で、何を食べるかによっても、免疫細胞を強くすることができます。
納豆を食べることでも、免疫力アップに期待がもてます。
腸から免疫力アップ
発酵食品である納豆を食べることで、腸内細菌のバランスがよくなり、腸内環境が整います。
腸には、体内の約60〜70%の免疫細胞が集まるので、腸内環境がよくなると、免疫力もあがります。
納豆菌は、生きたまま大腸まで届きます。
菌が腸内で活動できるのは、3〜4日くらいです。
1日40〜50g(1パック程度)を目安に食べるといいでしょう。
腸内環境が整い、代謝や免疫力がアップし、健康な体の維持に役立ちます。
https://elparaiso4.com/health/dietitian-intestine/
血流改善から免疫力アップ
冷えや自律神経の乱れにより、血液の循環が滞ると、免疫力は低下します。
納豆のネバネバ成分(ポリグルタミン酸)に含まれるナットウキナーゼが、血栓を溶解し、血流を改善します。
血流がよくなると、免疫細胞の全身への移動もスムーズになります。
新陳代謝も活溌になり、冷えも改善されます。
血液は、夜、寝ている時に固まりやすく、脳梗塞や心筋梗塞の原因となります。
夕食に納豆を食べると、血流がよくなり、免疫力アップも期待できます。
お肌から免疫力アップ
外敵から体を守るために、皮膚や粘膜を強くしておくことも大切です。
納豆には、体をつくるたんぱく質や、抗酸化作用を持つ成分が含まれます。
抗酸化作用により、体内や肌の老化を防ぎ、丈夫に保ちます。
肌のハリや弾力、保湿力も高まり、抵抗力がつきます。
運動によって免疫力アップ
ストレスにならない程度の運動をすると、免疫力が高まります。
体を動かすために必要な、筋肉や骨が丈夫であることも大切です。
納豆に含まれるたんぱく質やカルシウムは、筋肉や骨を形成し、強くします。
基礎代謝を高める成分により、体脂肪の燃焼にもつながり、疲労回復も早めます。
まとめ
免疫力を高める方法や食材は、ひとつではありません。
生活習慣を見直し、バランスのとれた食事をすることで、いろいろな栄養や有効成分を取り入れることができ、免疫力アップにつなげることができます。
免疫力を上げることから、健康な体づくりを目指してみるのもいいことです。